無痛分娩とは
日本では無痛分娩の認知度は低く、利用度は出産全体の1割程度といわれています。海外では無痛分娩は出産全体の6割以上となっていて、出産後の回復の早さも人気の理由です。日本では出産の痛みに耐えてこそ母親であるという意識が根強く、それが美徳とされていることも無痛分娩が広まらない理由のひとつと考えられています。
また、無痛分娩には産科医と麻酔科医の資格が必要ですが、一回のお産で両方の医師を揃えることは難しく、両方の資格を同時に持つ医師は少ないため人材難という点でも無痛分娩ができる環境が整っていません。特に医師の中でも麻酔科医は少ないため、無痛分娩が可能な産院というと麻酔科医の常駐している大きな大学病院などに限られ、自然な陣痛を待たずに陣痛促進剤を使った計画出産となることが多いです。
無痛分娩の痛み
無痛分娩は完全に痛みを取り去ることはできないため、実際には痛みを和らげる和痛分娩となっていて、うまく麻酔を効かせることができれば3分の1〜半分程度の痛みに抑えることができるそうです。人によって痛みの程度や感覚は違いますが、無痛分娩経験者によると生理痛程度の痛みと表現する人もいます。
なぜ完全に痛みを取り去ることができないのかですが、完全に麻痺させてしまうと赤ちゃんを生み出すためのいきむ力も取り除かれてしまい、お産が進まなくなってしまうからです。そのためあえて3分の1〜半分程度の痛みが残るように調整して麻酔をかけ、痛みを軽減させながらいきむ力を残すという方法がとられています。
無痛分娩の麻酔
無痛分娩では硬膜外麻酔という麻酔方法を主としています。硬膜外麻酔とは、背骨の中の脊髄をおおっている硬膜という膜の外側に細い管を入れてそこに局所麻酔薬を入れて一時的に神経を痺れさせるという方法です。この方法はもっとも安全で確実、赤ちゃんへの影響もほとんどないとされています。
基本的にはこの硬膜外麻酔で分娩を進めていきますが、状況に応じ仙骨神経麻酔、陰部神経麻酔を随時使用し痛みを和らげていきます。
実際の流れ
無痛分娩では計画出産が主流ですが、自然な陣痛がきてからスタートさせるのが本来一番よい無痛分娩の流れです。
- 計画出産では出産予定日より早めに入院し、陣痛促進剤などを使い人工的に陣痛を起こさせます。
- 自然な陣痛がきてからの無痛分娩では、陣痛がきてから入院し点滴など諸検査を行います。
- その後の流れは同じで、陣痛が一定の間隔になるとまず背中に痛み止めの局所麻酔をします。
- そこから髪の毛ほどの太さの柔らかい管を注射して背中に入れていきますが、最初に痛み止めの麻酔をしているためこの痛みはほとんどないようです。
- 子宮口が3センチを超えると背中の管から麻酔薬を投与し陣痛の痛みをコントロールしていきます。
- その後痛みの程度に応じ麻酔を追加していき、お産を進めていきます。
- 麻酔が効いていくごとにいきみ感が足りず赤ちゃんが出てきにくい場合には必要に応じ陣痛促進剤や吸引分娩などを使います。
- 出産後は麻酔の管を抜き無痛分娩は終了となります。
会陰切開をした場合は縫合を行いますが、無痛分娩ではこの痛みは全くないようです。
無痛分娩の選択
痛みに弱く、出産というと壮絶な痛みに耐えなければならないというイメージが先行して恐怖でした。
そんな中無痛分娩というものがあることを知ったことで出産への恐怖感が薄れました。元から痛みに耐えられるという人もたくさんいるし、自分の母も痛みに耐えて私を出産したことはわかっていますが、できることなら痛みは軽く産後の回復も早くしたいと本気で考える人は無痛分娩を選択することもありだと思います。周りからは無痛分娩というと母親になる自覚がないとか、痛みに耐えてこそ母親だといわれることがあるかもしれませんが、お腹の中で10ヶ月赤ちゃんを育てる中では様々なことがあります。
初期にはつわり、お腹が大きくなることで起きる夜の寝不足やこむら返り、貧血や体の疲れやすさ、今までとは全く変わる生活は全て赤ちゃんのためで、母親になる自覚は陣痛の痛みがあってもなくてもできます。無痛分娩に興味がある人は無痛分娩を行なっている産院で不定期に行われている教室などに参加してみることをおすすめします。